花粉症・アレルギー性鼻炎とその治療について

花粉症・アレルギー性鼻炎について

花粉症・アレルギー性鼻炎は、アレルゲンと呼ばれる原因物質ダニスギ花粉など)によって引き起こされます。

院長は耳鼻咽喉科の専門医ですが、アレルギー専門医でもあります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎で辛い幼少期を過ごした経験から医師を志した事もあり、患者さんの気持ちがよりわかる分野であると思っています。

「耳鼻咽喉科」のみの標榜でしたが、この領域も積極的に診療を行うため「アレルギー科」の標榜も追加しました。

以前は花粉症についてのテレビ出演、最近は内科医向けの医学書に花粉症に対する治療について執筆しています。
また、得意分野である慢性上咽頭炎の診療、特にEATのアレルギーを抑制する効果について学会発表を行っています。

第122回日本耳鼻咽喉科学会学術講演会「慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過治療(EAT)の効果と呼気NO濃度について」
第34回日本口腔咽頭科学会学術講演会「慢性上咽頭炎に対するEATの作用機序と内視鏡所見:呼気NO検査での検討」

アレルゲンの検査

アレルゲンと呼ばれる原因物質(ダニ、スギ花粉など)は血液検査でわかります。
指先で採血する簡易な血液検査でできるイムノキャップラピッドと、通常の血液検査で行うRAST・MAST36・VIEW39に分かれます。

イムノキャップラピッド
アレルギーの検査(RAST)
アレルギーの検査(MAST-36、View-39)

鼻過敏症について

鼻過敏症とは、くしゃみ、鼻水を来す疾患で①アレルギー性鼻炎②好酸球増多性鼻炎③血管運動性鼻炎に分かれます。

①のアレルギー性鼻炎は血液検査でアレルゲンが同定された場合です。

②の好酸球増多性鼻炎は、血液検査の白血球分画のうち、好酸球が増えている検査結果がでた場合です。好酸球はアレルギー反応に関する免疫細胞のため、アレルゲンがなくても好酸球が増えている場合は、鼻症状としてくしゃみ、鼻水を来します。

③の血管運動性鼻炎は、温度変化や気圧の変化でくしゃみ、鼻水を来します。自律神経の過敏反応です。
血液検査でアレルゲンがなく、好酸球も増えてない場合は、多くの場合は③の血管運動性鼻炎と説明されます。が、最近になって新たな疾患④局所性アレルギー性鼻炎(LAR:Local Allergy Rhinoritis)である可能性があります。

④の局所性アレルギー性鼻炎は、スギやダニなどのアレルゲンが鼻に反応してくしゃみ、鼻水を来しますが、血液検査でアレルゲンが同定されない疾患です。鼻過敏症の40%は局所性アレルギー性鼻炎と言われています。耳鼻咽喉科医はアレルギー性鼻炎患者さんの診察時に鼻内所見を確認します。①のアレルギー性鼻炎の場合は、下鼻甲介といって鼻のアレルゲンの反応部位である突起が白く変化します(下鼻甲介蒼白)。④の局所性アレルギー性鼻炎の場合も下鼻甲介は白くなっており、①のアレルギー性鼻炎との違いははっきりしません。

交差抗原について(花粉食物アレルギー症候群PFAS:口腔アレルギー症候群OAS)

ある野菜や果物を摂取した後(直後~15分以内)に、口の中がかゆくなったり、のどがイガイガして腫れたり、息苦しくなったりするなどの症状が現れる事があります。これは「花粉食物アレルギー症候群(PFAS)口腔アレルギー症候群(OAS)」と呼ばれています。以前は軽度な症状のみという認識でしたが、まれに生命を脅かすアナフィラキシーにつながる場合があるとされています。

シラカンバやハンノキ等、カバノキ科樹木の花粉症の患者さんが、バラ科の果物であるリンゴやサクランボ、桃を食べた時に上で示したような症状を来す場合があります。また、イネ科の雑草やブタクサ花粉症の人がウリ科の果物であるメロンやスイカを食べたときに症状を来します。これは花粉と果物の抗原の一部がにているため(交差抗原性)、体が間違って症状を来してしまうためとされています(Ex.リンゴを食べているのに体はシラカバを食べていると錯覚する…)。

最近よく相談されるケース
トマトジュースを飲むとのどが痒くなる…→スギ花粉症
体のために豆乳を飲むようになったらのどが痒くなる…→シラカバ花粉症

花粉症・アレルギー性鼻炎の治療について

基本は「アレルゲンからの回避」と言って、アレルゲンをとらない、即ち花粉症ならマスク・メガネ、食物なら摂取しない様に努めます。

スギ花粉症の治療については下記サイトを参照してください。
Panasonic UP LIFE 花粉症企画前編「花粉防御は生活の工夫から」
Panasonic UP LIFE 花粉症企画後編「花粉時期に要注意の3大習慣!」
花粉症について 教えてドクター家族の健康 BSジャパン 2014年1月30日放送

花粉症・アレルギー性鼻炎に対する治療は、①内服治療・点鼻治療、②手術治療、③点滴治療、④免疫療法に大別されます。

①の内服治療は、抗ヒスタミン剤の内服、抗アレルギー剤。ステロイド剤の点鼻です。外来で主に行われているものです。

②の手術療法は、アレルギーの反応の場所である下鼻甲介をレーザーで焼く治療法(以前横浜中央病院耳鼻咽喉科時代に取材された動画)、等です。
その他の手術療法についても大学病院耳鼻咽喉科をご紹介します。

③重症なスギ花粉症に対して点滴療法が保険適応になりました。ゾレアⓇです。ノバルティスファーマ:ゾレアのサイト
血液検査を行いスギのアレルゲンを測定します。体重によって投与量が異なります。ただし当院では行ってはおらず、大学病院を紹介します。

④の免疫療法は、患者さん毎にアレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から徐々に量を増やし繰り返し投与することにより、体をアレルゲンに慣らし症状を和らげる治療法です。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)も期待されます。以前は注射によるものしかありませんでしたが、最近はアレルゲンを舌の下(舌下)に投与する治療法があり、スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対して保険治療が行われています。

舌下免疫療法について

治療の流れ

舌下免疫療法の具体的な方法としては、まず問診と血液検査(または皮膚テスト)で、患者さんのアレルギーの原因であるアレルゲンを確かめます。気管支喘息や口腔内に傷や炎症のある方、他の疾患で治療を受けている方、妊婦・授乳婦の方などでは、舌下免疫療法による治療を受けられないことがあります。治療は、1 日 1 回舌下に薬剤を投与します。投与後は 1 分間あるいは完全に溶解するまで舌下に保持し、その後飲み込みます。投与後 5 分間はうがいや飲食を控えます。また、投与前および投与後 2 時間は入浴や飲酒・激しい運動を避けます。投与する薬剤(アレルゲン)の量は徐々に増量します(スギ花粉症なら 1 または 2 週間、ダニアレルギー性鼻炎なら 3 日から 1 週間など)。副作用への対応を考慮し、初回投与は医療機関内で行い、その後 15分間は医師の監視下で待機します。翌日(2 日目)からは、自宅で患者さん自身が投与しますが、日中や家族のいる場所での投与が推奨されます。治療期間は 3〜5 年が推奨されます。また、投与を長期中断した後、再開する場合は、医師に相談する必要があります。なお、当院への通院が難しい場合や治療途中での転居の必要性が生じた場合は、近くのアレルギー専門医療機関を紹介のうえ治療を続けることも可能です。

有効性について

一般的に舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、8 割前後の患者さんで有効性が認められています。スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対する 舌下免疫療法においても、種々の報告からその有効性・安全性が確認されています。また、飲み薬や点鼻薬、点眼薬はあくまで一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む患者さんには、積極的にお薦めしています。

安全性について

副作用としては投与部位である口腔内の腫れ、痒みなどが最も多くみられます。特に、投与後少なくとも 30 分間、投与開始初期のおよそ 1 か月などは注意が必要です。これらの副作用は投与後数時間で自然に回復することが多いですが、症状が長時間持続する場合は、医師に相談してください。また、アナフィラキシーなど重篤な症状が起こる可能性もあります。アナフィラキシーと考えられる症状が発現した際は、直ちに医療機関を受診するなど迅速な対応が必要です。

『鼻アレルギー診療ガイドライン 2020 年版(改訂第 9 版)』より引用改変